Yuzo Gallery Top  ◆2011

 

2011/1/22

豊田勇造(Vo.G.)
山田晴三(Bass.カリンバ)


at 集酉楽サカタニ


  

どちらもハード使用に耐えた楽器。

 
 

サカタニライブももう5回目。
毎年ならハモンドオルガンの西野さんとの
ジョイントが目玉となっているライブ。
ところが今年は訳あって
西野さんの都合がつかないという。
正直、それを知った時はちょっとがっかりした。
ただ、視点を変えてみれば
勇造さんと晴三さんの2人きりのライブというのも
また味わったことがない。
これは怪我の功名となって
面白いものがでるかもしれないという
別の期待も湧いてきて、カンチと駆けつけていた。
間に合うだろうか。
ちょっとした打ち合わせを終えて
北白川から七条京阪にハンドルを切ったのは
開演30分前だった。
車を停めて、駆け足でサカタニさんに向かう。
コンビニ横の見慣れた階段を上がっていくと
いつものような看板がない。
それが少し不安になってくる。
階段を上りきる前に
待っていたかのように、サカタニさんがドアを開けてくださった。
その笑顔を見て、ちょっと安心する。
後ろから勇造さんが…よく来てくれたと泣き真似。(笑)
「もっと泣いてください」なんて冗談を言いながら
大急ぎてチケットを買うと
なんと、恐れ多くも“もぎり”は村元さん!
いつもよりも一回り小さくセッティングされた会場には
お馴染みの人たちがすでに腰かけていた。
ちょうど良いくらいの満員。 



 

まず最初はサカタニさんのご挨拶。

今年で5回目です。
続けて行きながら、工夫をするということが大事だと思っています。

ここで去年、55年ぶりの再会もあったことですし
また新しい出会いがあることを期待しています。
今日も古いJ200を抱えておられる。
すっかり復活した様子。
ギブソンのバリバリとした音。
太いイントロの間をすり抜けてくるように
軽やかに始まった
ギターが友達

 

1部

ギターが友達(ソロ)
吉井の伸吉つぁん
キッス・バルセロナ

≪山田晴三オンステージ≫
500マイル
大文字 
Lady Shine


 

明けましておめでとうございます!
毎年3人でやっているのですが
西野さんの都合がつかなかったので
今日は晴三くんと2人でやります。
サカタニ・プロデューサーから
「いつもと違うことを必ずやるように」と言われています。(笑)




早くも客席に近づいて
目の前でギターを弾く勇造さん。


晴三さんと一緒に
2曲目は大好きな柿が出てくる
吉井の伸吉つぁん
久しぶりに聴く。

 





最後はお互いの楽器を叩き合って終わる。
まさにライブならではのハプニング!
今日のコンセプトは「自分の好きなもの」です。
ギターが好きで、柿も好きで、アラレも好きで…
差し入れよろしく!
酒も好きです。
ここにはたくさんありますけど…


そう、ここは酒屋さんやもんね。売るほどある。(笑)





 

いつもはなかなか全容が見えないけれど
ここでははっきりくっきりの晴三さん。(笑)



ベースがとてもお茶目で楽しい。







更に好きなものに挙げられたのが「キッス」(笑)
晴三さんがすかさず
「最近してますか?」と絶妙のコメント。
想定外だったようで、勇造さんは一瞬固まってしまわれ
これには爆笑!
そして始まった
キッス・バルセロナ
あちこちで軽いキッスの絵が浮かぶ軽やかさ。
≪ここからは晴三さんのカリンバコーナー≫

 

まずは小さなカリンバの紹介。
シェーカーを付けていて、シャカシャカ♪と軽快。
500マイルを演奏。

シェーカーの部分は人に頼んだらいいんですが
友達が少ないもんで(付けています)…


これまた爆笑!

カリンバとの出会いは1988年のことで
誕生日のプレゼントにもらって
我流で始められたんだそうな。





続いてアフリカのカリンバの紹介。
音が濁っている。
1フレーズがいつまでも続く
アフリカ音楽特有のトランス状態のようになって
止まらなくなるということ。
去年カンチと一緒にライブをやったJT☆STARSの音楽を思う。
キーは「4、7抜き」と言われるもの。

このカリンバを使って、なんとなんと
大文字を歌われた。
これにはびっくり!
カーテンの向こうに引っ込んでおられた勇造さん(矢印)も
いてもたってもいられなくなったのか
カーテンの向こうから「さあもういっぺん!」と歌声が聴こえる。
 

 感心するやら笑うやらの作品は
そうめんの箱を改造したもの。
3年物なんだそうな。(笑)


カーテンの裏に並ぶ
晴三さんのお道具箱たち。



 

大きなリンバはシタール崩れ。
ということはカボチャということか。
Lady Shineの歌が素晴らしくこのカリンバに合っていた。



トーンバーは竹製。
金属のバーに比べて、深い音がしていた。






カリンバ奏者晴三、客席の間をぬって演奏するの巻。(笑)
休憩に入る前に
サカタニさんから松本酒造220周年記念のイベントの紹介。
ジャンケンをして、何人かに酒粕をプレゼントされた

 



もらったよ。
2部の初めにもサカタニさんの挨拶。
法然院の和尚さんのことを紹介しつつ
 ●丁寧に生きる
●楽しく生きる
この2つを勇造さんが実行されていると感心されていた。

 2部

京言葉 さんづくし(ソロ)
再会(ソロ)
アイ・リメンバー・ユー
2008年2月インドの旅の記憶
夢で会いたい
虹の歌 


 


始めはソロで、今年初めて披露された曲を。
題名はとりあえず?
京言葉 さんづくし

京都の言葉は 不思議やな
お寺やお宮に さんつけて
弘法さん 天神さん 清水さん 愛宕さん

京都の言葉は 不思議やな
食べるもんにも さんつけて
お稲荷さん お揚げさん お豆さん おけそくさん


   ここで「おけそくさん」の意味について
   長谷川先生から指摘が…仏さんに供える小餅のことだ。

京都の人は おもしろい
デパート 店にも さんつけて
大丸さん お風呂屋さん 床屋さん 豆腐屋さん


   この調子で「さん」付き言葉が続いていき、最後は

お疲れさん おやかまっさん で終わった。 

勇造さんは朝起きてまず
「おきたそうし!」って言われるんだそうな。
実はここに勇造さんの人格のメインがあったりして…(笑)
実際、しばらく隣にいると
そのダジャレの連発に感心するやら困るやら。(~_~;)
去年あたりから
こういう一面を気楽に見せられるようになったということ。
大きなイベントを潜り抜けられて
何か気負ったものがはがれたような
そんな肩の軽さ、居心地の良さを感じる。


雲遊天下の本を片手に朗読。
再会が始まった。
足でタンタンとはっきりリズムをとっておられる。
太いギターで曲は終わった。

この曲は先生との再会を歌いつつ
旅先で再会できる人々との喜びを歌ったものです
という紹介。





 

ここで長谷川先生がご挨拶を。
最初の頃はこの歌を聴いても
先生ご自身が舞い上がっておられたので
内容にまで心及ばなかったそうな。
でも、ここに来てやっと冷静に聴けるようになられたとか。
そして、のんでもおっしゃっていたけれど
勇造さんのことは「ゆうちゃん」と呼びたいという宣言。
先生の中で、勇造さんはいつまでも「ゆうちゃん」なんだ。

一旦話が終わったところで再び長谷川先生。
「髪をくくっているほうが昔の面影があります」
これまた想定外の指摘だった勇造さんは
ただただもじもじと…(笑)
晴三さんが登場。

今日は西野さんが来られていないのですが
会場にピアノを弾く方が来ておられますので
その人にピアノを弾いてもらおうかと思います。


後ろから会場を眺めていたけれど
その声に合わせて動くような人影がない。
さては…やらはったかな?って構えていると
そろそろとピアノに向かわれたのは
他でもない勇造さんだった。
やっぱり〜〜〜!

1回しか会ってなくても忘れられない人がいるもので

アイ・リメンバー・ユーを。

京都弁で言うたら「あんたのこと忘れられへんのやけど」です。

 


 

軽く、でも重量も感じるタッチのピアノ。
荒いけれど味のあるピアノ。
晴三さんが座ってベースを弾かれるのも珍しい絵。
ベースが歌っている。
 




 

勇造さんのいつも使っておられる手帳には
ダライ・ラマの写真を挟まれている。
インドに行かれた時、うつらうつらされているお坊さんに
ダライ・ラマの写真を見せたときのこと
それがキーになってできた曲、
2008年2月インドの旅の記憶
2人がガンガン飛ばしていく。
ラサの町が燃え上がった♪というフレーズに向けて
曲が、思いが加速していく。
   日本でも有数のカリンバ奏者がバンドのメンバーであることが嬉しいです。
と晴三さんのカリンバと一緒に
夢で会いたい

男はやっぱり母親が好きで…

こんなことをすんなり話されることにちょっと驚いた。


母親の歌が多いんですが
「うちのおかちゃん」は俺のことを心配してくれて
20〜45才くらいまでは
「勇造、まだ歌を止めへんのか」
「お客さんは来てくれるか」
「ヤクザは来いひんか」と心配してました。
亡くなる5年くらい前に
「勇造!あのそれで10分(十分)や、
さあもういっぺんというのはええ曲やな」って
言うてくれました。


そういえば6月6日円山音楽堂の様子を見て
初めてお兄さんが安心してくれたと聞いた。
家族ってありがたい。

ゆっくりゆっくりと曲が漂った。


去年の暮に読んだ本の中にええ言葉を見つけて
それを軸にして
亡くなった阿部ちゃんを思いながら作った曲です。


曲名はとりあえず?
虹の歌という題名。

 

  瀬戸内に浮かぶ 小さな島を
 大好きな人が 書いた本の中に
 見つけた 胸打つ言葉
 それがこの歌の リフレイン

 その島の人は 多くを求めず
 足るを知って 暮らすという
 その島の人に できることが
 どうしてここでは できないのだろう

 奪い合えば 足りず
 分かち合えば 余る
    (略)
 求めるばかりの 忙しい心
 何も持っていけや しないのに
    (略)
 夢かもしれない でも本当に
 そうして暮らす 人たちがいる


 奪い合えば 足りず
 分かち合えば 余る

素敵な歌詞やね。







アンコール

スイートホームKYOTO
大文字
ブルーズをやろうぜ


アンコールはスイートホームKYOTOから。
同じく
大文字もみんなで大合唱!

新しいことを一杯させてもらいました。

もうおしまいというところでもう1曲やろうと
晴三さんに耳打ちされた。
始まったのは、ズンズンと迫ってくる。
ブルーズをやろうぜ


 
 



 

 

想像できなかったような展開でライブは終わった。
さくら、大満足!

 
 

サカタニさんでのライブは、西野さんのハモンドオルガンが加わることが
実はとても大きな特徴だ。
それが叶わないことなど、考えたことがなかったけれど
冷静に考えれば、そういう場面は有りえた。
そして、現実にそういう場面になった。

こういう展開になったときにこそ、ミュージシャンの底力が見えるように思う。
サカタニさんにしても、勇造さんにしても、晴三さんにしても
きっと知恵を絞られたことだろう。
結果、ライブはいつも以上にサプライズがいっぱいで
「この場」でしか味わえないものがいっぱい詰まった、ライブの中のライブだったと思う。
ちょっと躊躇しつつも出かけてよかった。
全く持って素晴らしいライブだった。

拾得で見る晴三さんは
ドラムと一緒にリズムを刻むセクションを担当されて
地味なポジションにおられる。
そもそもベースは、あまり前にでることの少ない楽器だ。
でも、実はベースってこんなにいろんなことができるということを
自由に楽しく展開して見せてくださった。
勇造さんがストロークでリズムを刻み
代わりに晴三さんがベースでメロディラインをなぞっていかれる。
ベース独特の太い音が、時に力強く
時にその音色ゆえに包容力を持つ。
まさに、弦が太いことを実感させられる音色だ。

晴三さんのカリンバも楽しめた。
手作りされている楽器を持ち込まれたその余裕も
ライブをゆったりしたものに味付けしていたと思う。

そんな新しい要素を加えつつ
自分の好きなものにコンセプトを絞った勇造さんもまた
とてもとても楽しそうだった。
2人でやることを明らかにプラスに転じていかれたライブだった。
自分の好きなものを自分の歌の中で見つけていく楽しさ。
そしてそれを披露して行く豊かな展開。


「私」という観客は音楽のプロではない。
誤解なく言えば、わくわくして「その時間」を過ごせるかどうか
それがライブが楽しいかどうかを決定する大きな要因になっている。
勇造さんの好きなものって、なんだろう?
晴三さんのベースはどんな展開をしていくんだろう?
あのカリンバはどういう作りで、どういう仕組みになっているんだろう?
お馴染みのあの曲を、ベースと2人で演奏されるとどうなるんだろう?

今までライブで経験していることの
ほんの少し外側にある未知のゾーン。
そこに足を踏み入れる楽しさ、その充実感。

私のつたない文章では伝えられない。
ライブはその時々で演奏者と観客が心通わせ
見えない空気で通じ合えたとき、一番幸せな気分になるということを
改めて実感した。

メンバーが揃わないという負の要因も受け入れ、そこで楽しむ力。
自由自在に「今」に対応していく力、それは生きていく力に通じる。
ギリギリまでじたばたすることも大事だ。
でも、じたばたしてどうしようもないとなれば
目一杯楽しむ方向に舵を切る。
そうすれば、壁だと思っていたところに扉があって、その向こうに別の世界が広がる。
それには明るい知恵が要る。
言い換えれば、その「明るい知恵」を得るために
私たちは学習してるんだと思う。

ライブ自体も楽しかった。
そして、そういう「力」を感じたことも同じくらい嬉しい。
歌は力。ライブは力。柔軟でしなやかに生きていく力。

改めて、勇造さんは本物だと思った。
そう胸をはって紹介できる。


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