Yuzo Gallery Tyuzo-top  2007




2007/9/15

知らない人ならちょっと入るのに躊躇するだろう。
そこは大阪の環状線桃谷駅のまさに高架下。
ひっきりなしに通る電車を支える高架を埋めるように
ぎっしりと建物が並んでいる。
それは建物というよりは、まるで橋の役割をしているかのようでもあり
シャッターの下りた倉庫もあれば
これ、何屋さん?と覗けば、葬儀屋さんだったり。
そのどれにも、上にペンキで番号が描かれていて
順に並んだ番号を追いつつ
139にたどり着く。
ここが「LOOP139」…今夜のライブ会場。
でも、入り口が…これ?(+_+)

入ったところがコンクリートの打ちっぱなしに
両側にカーテンのように布がかかっていて
それに添うようにポツンと椅子が数個。
え?こんなとこでライブしはるん?
恐る恐る奥に進むと、右手に簡単な電気のついたトイレ。
左手に、いろんなポスターの貼られている階段。
その階段をトントン♪と上っていくと、やっと人の気配がした。



入り口でチケットを販売しているわけではない。
一番奥のカウンターの、おでんや飲み物の手配をしているところまで
自己申告にいって、御代を払う。
あたりを見渡すと、知っている顔がひとつもない。
ここの常連さんたちだろう。
なんとなく大阪のニオイがする。


柱に描かれた龍

始まる前に勇造さんにお会いできた。
タイでのお礼と、今日来れた偶然を話す。
まさに、出かけてもいい、と言われたその日に
歩いて10分ほどのところで、勇造さんのタイ帰り初めてのライブあるなんて
この偶然をどう説明すればいいのか。
河の流れに吸い込まれるように、私はここにやってきていた。


なんとなく惹かれた階段に架けてあった額


        1部

夢で会いたい
はだしの歌うたい
汽車が湖のそばを通る時
長崎帰り
キッス・バルセロナ
バーン・サバイ
もしも賀茂川がウィスキーなら
ゆうじ


夢で会いたい
低い天井の上には、ゴトゴトと環状線の電車が走る。
その物音が気にならない。
かすれた声で静かにライブが始まった。





出だしは弦だけの音が響く。
そこにかすかに音程があるような、ないような。
列車が近づいてくる予感のイントロで始まった
はだしの歌うたい
ハーモニカが情緒たっぷり。
最後も列車が消え入るよう…



ギターのネックに右手を滑らせて
汽車が湖のそばを通る時
これは同じ汽車でも元気がある。
勇造さんの体が上下に
軽快にリズムをとる。


「今日はスペシャルなライブです。
なにしろ、後半の初日ですから…
まだ体は半分かそれ以上、“タイ”なんですが…」

少しゆるゆるとした勇造さん。
あのタイを思い出すと
そう簡単にチャンネルが切り替わらないだろうことは
容易に想像できた。

「今日は上に電車が走っていますが
走って欲しい時に走ってくれてるから
電車と相性がいいです」って、不思議なコメント。

確かに半分、タイ…ですね。(笑)


緩いコメントのあとに
一気に激しいギターが鳴り響く。
それは、
長崎帰り
私はいつも最後で、弦が切れへんか
ハラハラドキドキしている。
多分、のけぞってるはず。(^^;)








重い雰囲気を一転させて
キッス・バルセロナ
ギターはクリアな音で陽気さを増す。
バーン・サバイ
この歌は本当に優しい歌だと思う。
私はタイに行く際、ここに一番行きたかった。
でも結果行けなかった。

 ♪心の傷が癒える時
 ♪体が楽になるという

そんな「安らぎの家」
人の傷を癒すのには、その周りの人がどれほど優しいか…

9月1日にバーン・サバイであったライブは
大成功だったと、主催者の方に教えていただいた。
この歌のあまりの優しさに、涙されたと聞く。
頑張らなくてもいい、そのままでいいんだよねって
抱えているものがすっと消えるような
本当に優しい歌だと再認した。
かなり堪えた。





もしも賀茂川がウィスキーなら
翌日行われる
都雅都雅の「ホーム・スイート・ホーム京都Vol,V」の紹介を。
諸口あきら、SAMのお2人と一緒のライブだ。
この曲で、諸口あきらさんが「ウィスキー」になるということで
「それがどないなるかを見るだけでも
来る価値があると思います」と宣伝。(笑)
私はそれにまんまと乗ってしまった訳だけど…(>_<)

LOOP139では常連さんが呼び出されて
ほんとに上手に「ウィスキー」になられた。(笑)








いつかアルバムに入れたいと思いつつも
なかなかその機会がなかったという、古い歌
ゆうじ
今回、アルバムのコンセプトに合ったので
やっと入れることができたという話。
ゆうじさんがいつか
勇造さんのライブに来れたらいいなって
思いながら聴いた。



          2部

ある朝高野の交差点近くを兎が飛んだ
花の都/ペシャワール
ワルツを踊ろう
チャオプラヤ河に抱かれて
雲遊天下
マリファナ
大きな自由
大文字
ジェフ・ベックが来なかった雨の円山音楽堂
無事でいられたら


2部は休憩時間にみんなが提出したリクエストで構成。




2部の勇造さんは
サーモンピンクのストーンズのTシャツ。
こんな難しい色を着こなせるのは
この人ならでは、とまず衣装に感心。
そんなことに思いを馳せていると
いつの間にか始まったのは
ある朝高野の交差点近くを兎が飛んだ
はっきりとした言葉。



この曲を聴くのは久しぶり。
花の都/ペシャワール
軽やかな右手。
天井のせいだろうか。
それともアドバンスト・ジャンボのせいだろうか。
響き渡る音は
J200のそれとはまた違う硬さ。
叩く位置はブレーシングのあるとこらあたり?に
きっと研究されているんだろう。
傷を負って休んでいるJ200のことを思う。






「幸せな気分になるような歌を」というリクエスト。
「カタツムリが出てくる歌」…となると
ワルツを踊ろう
あとに行くほど大きくたっぷりとした構成。
唄い終わってから
「自分で言うのもなんやけど、名曲やな〜!」って。(笑)
チャオプラヤ河に抱かれて
この歌に出てくる

♪船が通る度に桟橋が揺れる
♪島のような浮草が漂っている
♪流れ去るもの 止まるもの
♪河はいう 「その執着を捨てなさい」

まさに私の目の前の桟橋が
ガタゴトと音を立てて
今にも流されんばかりに揺れていた
あの映像が浮かんでくる。
私の場合、夜だったから
河がどちらに流れているのかさえわからなかったけれど
ゆったりとしたその有り様は
「抱かれている」気持ちそのものだった。








カンチがリクエストした雲遊天下
カンチがこの曲を選んだのは意外だったけれど
それだけ疲れているのかな、迷惑かけてるなと
横顔を覗く。

勇造さんのギターははっきりとした運指で音を押さえ
1音1音丁寧に響かせている。

♪人が生きたかたちなど
♪何もとどまらぬものを

本当にそう思う。
有るように生きる、それが一番幸せなんよね。
この曲はいつから聴いてないだろ?
始まったのは、
マリファナ
なんと、その時「カンチ、ハーモニカ吹かへんか?」って
勇造さんから声がかかる。
ハーモニカなんて、本当に吹いたことのないカンチ。
突然の話に動揺しつつ、ぶっつけ本番で前に出た。

先ほどの雲遊天下も、そしてこういう配慮も
もしかしたら、勇造さんの陰ながらの
私たちへの応援の気持ちであると感じた。
「オレの、ライブ仲間のカンチです!」って紹介されたカンチ。
この人もまた、幸せな人だと思う。
そんなこと言うてもらったら
例え「ぴー♪」とでも吹かなくっちゃ…ね。(笑)
「ハーモニカを人前で吹くなんて10年ぶりです」と
小さくなって退席するカンチに
拍手をくださったみなさん。ありがとうございます。



大きな自由でのアドバンスト・ジャンボの鳴りようには驚いた。
低音もぶんぶん鳴っている。
まさに、大きな気分になれた。








リクエストで構成されたら、やはりこの曲は出てくる。
それは、
大文字
最後はバサッと終わった。




「タイから帰ってきたばかりやから
 今日はアンコールはなしで…」と断りつつ
LOOP139のマスターのリクエスト
ジェフ・ベックが来なかった雨の円山音楽堂
思い切り演奏。
余りの激しさに
♪こんな格好して立ってた〜! を
見とれてしまって
シャッターを押すのを忘れた。(^^;)

これじゃアンコールは無理だ。






そして最後は
「ほんまに万感を込めて、万感を込めて歌います」と
念押ししながら
無事でいられたらを。

ファンとは勝手なものだ。
そこに自分へのメッセージがあると思ってしまう。
それが勘違いであっても、幸せな勘違いをしてしまう。
私はこの歌に、勇造さんの「無事でいろよ」という
優しいメッセ−ジを感じていた。

人にはいろんな有り様がある。
バーン・サバイでの人たちも
病を持ちながら、差別され傷つきながらも
同じ時間を過ごしている。
自分が自分でいられたら、それでいい。
無事でいろよ…
そういう勇造さんの優しさが胸に堪えてライブは終わった。




最後にCDのプレゼント抽選会が行われた。
その商品は、2004年だかに高槻で行われたカラワンコンサートの
CDとDVDの2枚組み。
入場時にもらった勇造通信に番号が打たれている。
そのくじを箱に入れて何度も振る、LOOP139のマスター。
ついには床に巻き散らかして、その中から1枚を拾われた。
それが…私の番号だった。\(◎o◎)/!



思わず「当たった〜!」と手を挙げたら
勇造さんが「え?ほんまに当たったん?」って
また、タイ半分の言葉。(笑)

「この人はいろいろ大変なことがあって…」と紹介されつつ
私はCDを受け取った。
何しろ、このDVDには私が写ってるんやもん。
ほんまは全部買い占めんとアカンのかもしれへんくらい。(笑)

あとでサインをもらいにいったら
「おかえり」って書いてくれはった。
なんか、嬉しかったな。o(^o^)o


しんどいときはしんどい。
けど、しんどくなくなった時
「しんどくない幸せ」を感じることができる。
見えないものがたくさん見えた、そんなライブだった。

勇造さん、たくさんのものを頂きました。お〜きに!
このご縁、大事にしたいと思っています。



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