Yuzo Gallery Top  ◆2007






2007/7/22


ドアを開けると、すでにアルコールを片手にした知った顔が並んでいて
手を振って迎えられた。
ライブの前から、狭い店内は盛り上がっている。
音合わせを終えた勇造さんと長野さんが
並んで立っておられると
なんとなく「お疲れさ〜ん」みたいな雰囲気になって
「今日はもう、歌わんでもええみたいやな」って勇造さん。(笑)
ファンとの近さがこの箱の良さ。
京都北のライブハウスからも、ご一行さまが到着。
私も、知ったファンに挟まれて腰掛けた。

楽しくなりそうな予感。





最初に、坂庭寛悟さんのご挨拶
「リハを聴いていると、期待大です」
 

本当に久しぶりに向き合う2人。
見合って、何を思っておられるんだろうか…



勇造さんと同じ小学校に通っていたという
懐かしい顔が客席にあって
「故郷に帰った歌が急に唄いとなった」…と
瓦屋根続く細い道
しっとりとライブは幕開けた。
勇造さんも予定外の始まりだったと、あとでおっしゃっていた。
だからライブなんよね。(^-^)


     1部

瓦屋根続く細い道
背中(ソロ)
長崎帰り(ソロ)
キッス・バルセロナ(ソロ)



ものすごくドラマティックなイントロに
ハミングバードがうねっている。



勇造さんのソロで背中






はっきりと言われた。
「ラブソングの
長崎帰りです」って。
そういえばいつか聞いたことがある。
「僕の歌はみんなラブソングです」




「悲しい、切ない、ブルージーな…」
形容詞ばかりが連なるMC。
ん?一体何を言わはんの?
このMCはどこに着地するの?と思っていたら
「そんな手拍子をください!」。。。。((((((o_ _)oばたっ




そんなに弾いたら、切れる〜!(‥;)


と思ったら…やはり、3弦が切れた。(>_<)



即行で張替え。






 2年前に若い2人の結婚パーティーに呼ばれたとき
 そして、89歳の最高齢のファンのことを思い作ったという

 キッス・バルセロナ


 「僕の曲で一番ポップな曲です!」

 ほんま!
 1人で、チュッチュッ♪とキスの音を出して始まった。
 敬明さんが居はらんでも、できるという証明。(笑)

 そして、多分に計画的に、最後は半音で終わった。
 やられた…かも。(笑)

追放の歌
イムジン河(長野隆ソロ)
お茶でも飲みませんか(長野隆ソロ)
うろこ雲の絵

ここからは長野さんがメインのコーナー



長野さんは今、ご夫婦で人形劇をされているそうな。
(奥さんも歌がめちゃめちゃお上手!)
道理で温和で親しみやすいはず。(^-^)

「昔はステージで自分が露払いをしていたけれど
今日は勇造が露払いをしてくれた」と
勇造さんのリードギターで
追放の歌













終わってから
「すっかりあがってしもた…」って。(笑)
その率直さに笑いがおこる。


長野さんのソロで、
イムジン河

長野さんとこのほっこり弟国でお会いするのは
これで三度目か。
初めて歌声を聴いた。
私の全くの偏見だけれど(!)
ベースを弾く人は、概ね後ろに控えて
物静かなタイプの人が多いから(本質はかなり別!)
これほど歌われるとは思ってもみなかった!
その声に聴き惚れた。





長野隆さんは、五つの赤い風船やI・M・Oバンドで
活躍されていた。

客席に古いレコードを持ってきている人がいて
急遽、「それをやってみましょか」と
I.・M・Oバンドの
お茶でも飲みませんか

♪もしお急ぎの用がなかったら
  是非お付き合いください

このお行儀の良さが時代やなあって思う。
「茶しばこ!」なんて言うてたら
こんな歌はできない。
言葉って大事やね。








勇造さんがハープで登場。
五つの赤い風船の
うろこ雲の絵を。

「作詞作曲は人格とは別物ですね。
聴いた人がどう捕らえるか。聴いた人のものになるんですよね。
チェーンですわ。」

唄う前に言われた長野さんのその言葉の意味が
曲を聴いてよくわかった。
この歌詞は本当にジーンと来る。
勇造さんも「ええ歌やねえ」とあとでおっしゃっていた。
じっくり聴いているうちに
自分の世界に入ってしまう歌。
歌が「私」の中で飽和した。

カンチが一緒に小声で歌っていた。
カンチもまた「自分」の中にいたのだろう。
まさに歌のチェーンだった。

 ♪心にひびくしらべは 愛の歌でありたい

…勇造さんの歌はどれもラブソング。
届けるもの、それは「愛」でありたいという
同じ根っこが見える。

帰宅してから、『五つの赤い風船2000』を改めて聴いている。
        2部

夕暮れ
私の上に降る雪は
ある朝高野の交差点近くを兎が飛んだ
雲遊天下
ブルーズをやろうぜ
吉井の伸吉つぁん
老いてこそロック
満月
大文字
夢で会いたい



ベースのソロで始まった
夕暮れ
この曲は『豊田勇造 長野隆 ライブ』に収録されている。
勇造さんのほろ苦い失恋の歌…なのかな?(笑)
幼なじみの方が客席におられたので
「これ以上詳しくいうとバレル…」って言いながら
ちょっと裏話を…(^-^)


私の上に降る雪は
1フレーズずつ、置きにいくようにしっとりと。
淡々と、でもはっきりとした言葉の並び。
口笛が響く。



「昔よりは詩が理解できるかな…」と控え目に。











隣に座っていた若者が
うつむき加減で目を瞑って聴いていた。
ゆっくり物語が終わる。


勇造さんが長野さんと「是非やりたかったんや」と
終わってからおっしゃっていた曲
ある朝高野の交差点近くを兎が飛んだ

ライブに行く前に聴いた33年前の録音では
ほんとにゆっくりと兎が浮かびあがっていたけれど
33年後の兎は、輪郭がもう少しはっきりとしていた。

勇造さんがギターのネックに指を滑らせて音を出すと
それに呼応するように
長野さんのフレットレスのベースも滑る。
勇造さんの目が長野さんの手元に注がれていた。

「33年前の歌をやっても、懐かしみだけとちごて
リアルタイムでやっても…やれてるかな?」

歌はいつも生きている。
「今」の兎が飛んでいた。(^-^)





 ベースの音が底から響いてくるのが心地よい雲遊天下
 記憶違いでなければ
 「アンコールへの道」で晴三さんがカリンバをされる時には
 代わりに仲さんがベースを弾かれることもあるけれど
 「雲遊天下」では仲さんはギターを持たれることが多いように思う。
 だから、ベースの効いた雲遊天下が
 新鮮だったのかもしれない。

 押し上げるようにラストに向かう。


坂庭寛悟さんの「たいこ(by yuzo)」が加わって
ブルーズをやろうぜ
一気にブルージーな雰囲気に。


歌詞の中に心遣いを感じた、
吉井の伸吉つぁん
勇造さんからテレパシーが届いた。((^-^)v

老いてこそロック
33年経って、確かに老いたけれど
だからこそ、今この時にロックを…


客席には赤いTシャツの赤木一孝さんが。
先日、ここでのご自分のライブの際
「用事があって来れそうにない」と
残念がっておられたけれど
時間のやりくりが出来たようで、駆けつけてこられた。
それを勇造さんが見逃されるはずがない。(笑)





「この頃赤木くんとは仲よ〜してるんねん!と勇造さん。
『夢で会いたい』のジャケット絵を描かれている畦地あつさんは
赤木さんのCDにも絵を提供されている。
そして、この日の勇造さんのスイカ絵のシャツのデザインも
同じく畦地あつさんだという。

そんな偶然の重なりを紹介しながら始まった
満月
その赤木さんのリードのすばらしい事!
急に呼び出されたにも関わらず
意思のはっきりとしたリードが展開した。
これには長野さんも感激しておられた。

ここで再びハミングバードの3弦が切れる。


ということで、赤木さんが弾いておられた
お店のSヤイリのギターを取って
長野さんと2人で
大文字
初めて聴くSヤイリの大文字!(笑)
ハミングバードに比べて、音が立っていた。



「チョーさん(長野さんの愛称)!なんか言うて!」と
MCを長野さんに振る勇造さん。
「俺、もう一杯一杯やねん!久しぶりに真剣やし!」と長野さん。
客席から、「お!いつもは真剣ちがうんか!」って
野次が飛ぶ。(笑)
そう…ここは長野さんのホームグラウンドだから…ね。

♪口には出すまい 舞台の上からは
   自分で選んだ 道を進め

それぞれの道を歩く33年後の2人に
この言葉が降り注ぐ。




長野さんと2人の
夢で会いたい
同じ曲なのに、楽器が替われば、演奏する人が替われば
違った顔になる。
  アンコール

Eの即興ブルーズ


厨房の奥で洗い物をしておられた坂庭寛悟さんを呼び
再び赤木さんも…
そして修学院アコシャンの一団におられたギターリスト
三島さんも。(勇造さんの後ろにいらっしゃる)






そして、な、な、なんとカンチも呼ばれて
舞台は満員電車に!
で、こともあろうに
勇造さんがハーモニカを持たれたことで
カンチにマイクが回ってきた。ぎょえっ。\(◎o◎)/!

大所帯で何をするのかなと思っていたら
勇造さんの口から出たのは、「
Eの即興ブルーズをやろか。」
即興…?!(^^;)

 ♪初めて勇造さんと長野さんのあのレコードを手にしたとき
   まさか こんな風に歌うことになるなんて
   思ってもみいひんかった〜♪

ほんまにそうやね。



長野さんにもマイクが回り

更に、客席にいた常連さん、たっちゃんが指名され…



かなり遠慮していたたっちゃんも
マイクを持ったら堂に入ったもの。






「いえ〜ぃっ!」って客席にマイクを向けて…
あ〜あ〜あ〜。(^^;)





さらに三重から来られた人にもマイクが回る。

最初はみんな遠慮しているのに
マイクを握るや否や、みんな歌い出すから
勇造さんも参った〜!と爆笑!



こうしてライブは大いに盛り上がってお開きになる…

といいたいところだけれど
一息入れてから、ほっこり弟国の恒例ナンバーに突入。
指名された人が歌い始める。
カンチも、いつもの歌をリクエストされると
坂庭寛悟さんがパーカッションに走り出てこられた。
更に、私の横で聴いておられた勇造さんが
片付けたハーモニカを引っ張り出して、前に。
カンチは行きがかり上(!)2曲ほど歌うことになった。




「33年前、どうしてましたか?」
そう聞かれた時、なんとか思い出す出来事はあっても
たとえばLPやCDのように
そこに切り取った「時間の現実」を抱える人は
案外少ないのかもしれない。
私なら、さしずめ写真くらいしか思い当たらない。
それとて、「意志」がはっきりしているわけではなく
ただただ、「その時」を貼り付けただけのものだ。




でも、勇造さんと長野さんには、明らかな33年前があった。
1974年6月6日大阪毎日文化ホールでのライブ録音。
中川イサトさんもギターで、またディレクターとして参加されているその音源を
ライブに出かける前に聴いた。
その、なんとゆっくりとしたテンポ!
収録されている曲の何曲かは、今でもライブでよく唄われているから
余計にその違いがわかる。

拾得の前で、何ゆえか番傘を広げ
ちょっと斜に構えて、意志のはっきりした視線を投げかける2人の写真。
尖っていたけれど、ゆっくりしていたあの頃。
そこには紛れもない20代の若者が居る。

一方、発売されたばかりの『夢で会いたい』の勇造さんの視線は
温和でゆったり。
2つの間には、明らかな時間が流れていた。

音源として残す事。
それは、その時の自分をそこで切り取る作業でもある。
ある時点で時間を停めることは
とても勇気の要ることではないだろうか。
自分を認めることができなければ、成し得ない作業だ。
自分の「その時」の思いや価値観に一生懸命だから残す。

思えば、勇造さんは『音のアルバム』を持っておられるんよね。



33年前に録音されたCDに書かれた、今の2人のサイン。
33年前と今の時間が重なるなんて
一体だれが想像しただろうか。

 ♪歩き続けよう歌い続けよう
          ♪いつか会えるだろう 無事でいられたら

まさにこの歌そのもののライブだったと思う。

時間は絶対だと思っていたけれど
切り取ることも、繋ぎ合わせることも、重ねることもできるんやね。
一度ゆっくり、勇造さんの音のアルバムを順番に開いてみようかな。
そうすれば、できたてホヤホヤの『夢で会いたい』も
更に輪郭をはっきり見せてくれるんじゃないかなって
気がしている。

名の通り、ほっこりしたライブ。
またこんな機会があるといいな。(^-^)


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