Yuzo Gallery Top  ◆2005





in 拾得

2005/9/20






ギターを持たない勇造さんが
1人ステージにあがり挨拶。
「今日は楽な曲順でやろと思うし…
本にちなんだ歌を唄いたいなと思てます。
入り口に一杯本を持ってきてます。
本は重いので…それを言うたら何がいいたいのか
わかってもらえると思うけど。(笑)」
テーマのあるライブは判りやすい。
『歌旅日記アジア編発売記念ライブ』の幕が開いた。


最初は、福山、笠岡でライブを開催しておられる
赤木さんとのぶちゃんの演奏。
「お祝いには、花束かうす〜い紙切れのほうがええんやろけど…(笑)
厚かましさが我々のノリなので…」
ギターとサックスの太いリズム。
言葉を歌に代えて贈られた。





1部

満月
アンコールへの道
タイ米ブルーズ
ポム・チョーップ
母の居ない部屋
満月
今晩の勇造さんは、ハミングバートを抱えてはる。
その気持ちがなんとなくわかる
愛おしむような、しっとりとした声。
この日も日本語バージョンだけ。
敬明さんの切れそうなハープと
永見さんの、顔をしかめて音を静めて叩く軽いシンバルの音が響く。





アンコールへの道
仲さんはエレキに持ち替えて。
晴三さんのカリンバが
曲全体にベールをかける。
この曲の、細かいシンバルの音が好き。(^-^)







 タイ米ブルーズ

 捏ねるような太いギターの音。
 足踏みも加わる。
 最後は音を置きにいくようにして終わった。
ポム・チョーップ
普段、日本では聞けない歌。
タイで、歌詞の最後に日本でお馴染みの言葉
「味の素」「ネスカフェ」「コカコーラ」…などを付けて唄ったら
受けたんだそうな。
タイ語の言葉のリズムが独特。






敬明さんが御機嫌なソロを。
今日はキラキラ光る帽子にサングラスで
おしゃれして…(^-^)


母の居ない部屋
「いつかは来るだろうとは思ってたんやけど…」
その時勇造さんはマレーシアに居はった。
あのあとの南風楽天でのライブを思い出しながら聴いた。
あの時と同じように
「しんみりせんと、リズム&ブルーズの
力強い手拍子をくれますか?」
これが勇造さんの悲しみかた…






 ここでハプニング。
 歌詞カードを上の控え室に忘れたことに気付いた勇造さん。
 イントロを長引かせて
 どうしようか、考えてはったらしい。(笑)
 ふと、目の前には『歌旅日記アジア編』
 ここに歌詞が載っていることを思い出し
 おもむろに、本を譜面台に。
 まさに、ライブな一場面。(笑)





高山病ブルーズ(ソロ)
この曲を聴くのは久し振り。
「この曲の間奏は…はぁ〜♪はぁ〜♪」
客席に経験者がいるのか、「わかるわ〜」という声。
エンディングでは、勇造さんより早く
誰かが「はぁ〜♪」と合いの手を入れて、笑いが起こる。


2部

高山病ブルーズ
カトリーナ(新曲)
この国で列車を走らせる男たちの歌
唇かみしめて
夢で会いたい
海の人
振り返るには早すぎる
カトリーナ(ソロ)
言わずもがな、アメリカを襲ったハリケーンのことを唄った新曲。

     カトリーナ カトリーナ
     可愛い名前を しているのに
     カトリーナ カトリーナ
     どうしてこんな ひどいことをするの
       勇造さん 勇造さん
       だって私は ハリケーンなんだから
       勇造さん 勇造さん
       雨も降らせる 風も吹かせる
    カトリーナ カトリーナ
    それでもやっぱり ひどすぎる
    カトリーナ カトリーナ
    それでもあんまり ひどすぎる
    ニューオーリンズの町を 水浸しにして
       勇造さん 勇造さん
       河より低く 住むなんて
       勇造さん 勇造さん
       湖より低く 住むなんて
       勇造さん 勇造さん
       そもそも それが 間違いと違うの
             ・・・・・(中略)・・・・・
    カトリーナ カトリーナ
    人の営みの 無情さよ
「歌のできたきっかけを知ってもらえるのが
 自分自身でも嬉しい。」


「本っていうのは、改めて、容積が大きいね。
 毎朝、寝る前もそれを眺めると、なんや嬉しいねん。」

まるで宿題を仕上げた子供のよう…(笑)


この国で列車を走らせる男たちの歌

勇造さんは345に持ち替えて。
サックスののぶちゃんが
この曲に大きく関わっていることで
選ばれた曲。






サックスの音が加わることで
列車の音が逞しくなった。
列車が走る!走る!舞台が狭い!狭い!
晴三さんが足踏みを始めはった。(^-^)



唇かみしめて
尖ったドラムの音が突っ込んでいく。
そのリズムの上を、サックスの哀愁ある音が流れる。
バンド全体の音が底から湧きあがって来るよう。

 



夢で会いたい
ハミングバードに持ち替えて。
ほてりを鎮めるようなカリンバの音。
ドラムのバチは柔らかく、勇造さんの声が切なくささやく。
最後はハーモニクスで終わる。
アコースティックな仕上がり。






海の人
仲さんがギターを拾得に「置いている」ことが判明。
エレキギターと2本を持ち運びできないという
理由らしいけど
そのこだわりのなさが仲さんらしい。(^-^)

仲さんのエレキが唄う。
まるでみんなで絵を描いているような
イキイキとした描写。



振り返るには早すぎる
ギターを345に持ち替えて。
カンカンというリズム。
晴三さんが屈伸してノリノリ。







一緒に演れるって、楽しいんやろなあという風景。


アンコール

歌いながら夜を往け
海のはじまり


歌いながら夜を往け
ギターをハミングバードに持ち替えて
赤木さんとのぶちゃんも加わる。
敬明さんと赤木さんのツイン・ハープが踊り出した。(笑)









海のはじまり
「1つの始まりやさかい、最後にこの曲を」
軽く引きずるようなドラム。
仲さんが引っ張ってテンポアップしてライブは終わった。









手元にある、1981年発刊の『歌旅日記ジャマイカー日本』
開けたどこからでも気ままに読むことができ
そこで若かりし日の勇造さんに出会うことができる、今や手に入らない本だ。
随分くたびれたけれど
カンチが勇造さんと再会を果たしたその日に頂いた
「20年ぶりの旅日記 2001.2.4 豊田勇造」というサインが
金色のペンで表紙に光っている。

あの本から24年経って、アジアでの足跡『歌旅日記アジア編』が発売され
その記念に開かれた今回のライブは、本の内容に添って構成されていたので
先に読んでいたせいもあって、背景をオーバーラップさせながら聴くことができた。

聴きながらふと、ライブの最後に閃いた。
直接本には書かれていない、アンコールの2曲が
全てに覆い被さるように唄われたその意味。
勇造さんに確かめたわけではないけれど
きっとそれなりの意図をもってこの曲を用意し、演奏されたんじゃないかと思う。
それはハミングバードを抱えておられた、この日の姿からも想像できた。
とりわけ、2日前の『お月見コンサート』でも最初に唄われた「歌いながら夜を往け」は
歌旅の日々を、闇の中で飲み込み吐き出し重ねた
裏付けのある歌なのだという確信が、むくむくと湧いてきた。

♪海を越えて行こう 空を超えて行こう
 国境を超えて行こう♪

どこにいても、いつ唄っても錆びないこの歌。
このメロディーが、勇造さんの後ろに絶えず流れていた。
ジャマイカから日本、そしてアジアへ
勇造さんの中には、早くから国境なんてなかったんだ。
歌いながら歩いていたら、いつのまにか国境を超えていた…
そんな大らかさ、自由を求め続けて唄い重ねた日々。
その歴史を改めて感じながら聴くと、この歌が更にイキイキと届いてくるようだった。



先日訪れた秩父のライブハウスの柱に、勇造さんの昔のサインを見付けた。
打ち上げでは、勇造さんの歌を諳んじて唄った人がいた。
ここにも来てはったんや…
偶然話した人が勇造さんを知っていた。
ここにも足跡がある…
あちこちで見えない足跡が繋がり、やがてそれは国境を超えて行く。
錆びない唄、錆びない心が
今この瞬間、目の前の舞台に立つ、晴々とした表情の勇造さんに繋がっていた。


「自分」を抱え続けてできた愛しい足跡が
こうして本という形になったことを、心からお祝いを申し上げたいと思います。
勇造さん!これからも「歌いながら夜を往け」…ですね。
一息つけて、またゆっくり歩いてください。
歩み続けてくださいね。

おめでとうございます!




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