Yuzo Gallery Top  ◆2003

2003/11/1

ライヴの後、深夜1時過ぎに南風楽天から帰宅し
それから気持ちをクールダウンして2時前にどうにか休んだのに、翌朝6時には目が覚めた。
私の中に何か眠りきらないものがあった。
豆からコーヒーを丁寧に淹れて、ゆっくりいろんなことを思い出す。
その間に辺りが明るくなってきて、あ〜今日も1日が始まるなあって眩しい思いで朝日を眺めた。


勇造さんのライヴ、このところ出先から駈け込んだり、都合がつかなかったりで、ゆっくりすることができなかった。
この日も直前までバタバタしていたけれど
でも、私にとってもホームグラウンドと言える南風楽天の3周年記念ということもあって
久し振りに気持ちはゆっくりライヴに向かっていた。

入り口でチケットを買おうとしたら、そこに一緒に出られる月夜さんがいらして
いきなり「私、さくらさんに間違えられたんですよ!」
?????なんのことだかさっぱり?????
間違えたという「その人」は、ケメコはうすの澤田さんの隣に腰掛けておられた。
どうやら、友人の知り合いのようで、その上澤田さんとも知り合いで
このライヴに私が必ず来るだろうと探しておられたみたい。ご挨拶をする。
また勇造さん繋がりで、新しい人と出会えた喜び。不思議なご縁。
ライヴの後に感想を聞いてみたら、とても満足しておられたようだった。
何しろ席もかぶりつきだったし、十分勇造さんのギターも堪能されたことだろうと思うと嬉しい。
またきっと、勇造さんのライヴでお会いできるんじゃないかな。

1部

スイートホーム京都
高野グランドマンションのブルーズ
振り返るには早過ぎる
フィルオックス
チャオプラヤ河に抱かれて
海の始まり
雲遊天下


敬明さんのハープ、仲さんのギターと共に
長いイントロで静かに始まった『スイートホーム京都』
勇造さんのギターはハミングバード…珍しい。
敬明さんのハープが今日はとりわけ冴えているみたい…
1曲聴いただけでそんな印象をピーンと受けた。
1曲目から、すごくこなれた音がしていたから。


  

『高野グランドマンションのブルーズ』
「敬明にブルーズをたっぷりうとてもらおかな」
勇造さんのそんな言葉から始まった。
いつもの曲に比べて
歌詞よりもメロディーのほうが勝ったような仕上がり。
これはよかった!
それでなくてもブルージーな曲が
一層煙ったように響いてきた。
敬明さんのハープはどんどん味わいが出てきている。





勇造さんと仲さんは、小刻みにリズムを刻んでバックに回り
あくまでもメインは敬明さんのハープに。
敬明さんの右手が小刻みに震えて
そこから奏でるハープが生き物のように反応して
小さい音でもしっかりした芯のある音を響かせる。

「今日はYuzo&Yuzoバンドのピックアップです。(笑)
 南風楽天が3周年、俺が高槻で唄い出して20周年、
 合わせて23周年!
 俺もようもったけど、南風楽天も(…もごもご…)です!(笑)」

なんで合わせるのか、よ〜わからへんけど…(笑)

「Yuzoバンドも選りすぐり、お客さんも選りすぐり!
 今日は趣向を凝らしてるんで、たっぷり楽しんでください。」

何があるんやろって、楽しみが膨らむ。(^-^)




『振り返るには早過ぎる』
マイクから少しギターをはずすと、ほとんどPAなしのように音が届いてくる。
いつのまにか敬明さんが上着を脱いでおられた。




「Fです。5カポです」と打ち合わせをしつつ始まった『フィルオックス』
ボブ・ディランとある時期意気投合したものの
途中から別々になって、不遇の最期を遂げたフィル・オックスを唄う。
この前のヒポポタマスのライヴで唄われたそうで
もう一度聴きたいという人がいらしたらしい。
私は初めて聴いた。

♪弾き手のないギターが寂しがるだけ♪

同じミュージシャンとして、なんとも切ない愛情溢れる唄だった。



「今日はそれぞれのメンバーが
 南風楽天ではやったことのないことをしようとおもてます。」
「仲くんは俺と一緒にマンドリンを弾くのは初めてで…
 この前拾得の時、シェリフで弾いてるのを聴いて
 ええなあとおもて、弾いてもらうことにしました。
 そやけど…マンドリンて簡単な楽器やねんなあ…(笑)
 俺にも弾ける?(爆笑)」


仲さんはニコニコと笑うばかり。



「南風楽天…この文字が俺の唄の中にも入ってます」
そう言って始まったのが『チャオプラヤ河に抱かれて』

そう「
南風」という言葉が確かに入っている。

♪風よ 
南風よ この歌を運べ♪










次は「
」という文字。『海のはじまり』のイントロ。
「ここでいつもなら、永見くんのドラムが入るんやけど…」と
はっしゃんを呼び寄せはる。
かなり酔いの回ったはっしゃんが、カホンで登場。
もうそれだけで舞台が和む。(笑)

♪生きている間は
しんでやれ♪




最後に「
」…これはみんなもう承知していた『雲遊天下』
でも…唄いながら勇造さんがふとつぶやかはった。
「今気が付いたんやけど、歌詞の中に天という文字があらへんやん…
あるのはタイトルやった!」って!(爆笑)
「けど、俺思うねん。天国も地獄もあらへん…て。
今生きていることが天国であり地獄やなって。」

生きている…それが全てやもんね。頷いた私。







勇造さんの周りに、はっしゃんがシャボン玉を飛ばす。
敬明さんはマイクをはずしてハープを吹いておられるし
仲さんはチリチリとマンドリンを奏でて…
みんな生きてるなあって実感のある顔つき。



1部を終えて、ここで思わぬ抽選会が行なわれた。
チケットを支払ったときに受け取ったアンケート用紙に書いてある番号を呼ばれたら当たり!
Tシャツ、古いテープ、勇造さんの昔の写真、J200の弦、古いCD…

マンマさんと私が5枚組の写真を、そしてカンチはTシャツを
私の前にいたJ200愛好の若者が、うまい具合にJ200の弦を当てた!
買ったんじゃなくて、「当てた」というのがうれしい!(笑)
写真は30代半ばの磔磔で唄う勇造さん。若い!!20代に見えるくらい。








2部の最初は、月夜さんとはっしゃん。
勇造さんが唄い始めたころに生まれたという月夜さん。
『空の見える場所』
さっきまで私の後ろで一緒にいて話しておられたのに
舞台に立つと
あっという間に自分の世界に入ってしまわれるのには感心した。
 

敬明さんを迎えて『小さな種』…私の大好きな唄。
歌詞もメロディも素晴らしいと思う。
でも、敬明さんはご存知ない。
それでも、ちょっとイントロを聴いて
早速メロディックなハープを吹かれた。
ものすごくいい音がしている。
もちろん、月夜さんとはっしゃんの息は
酔っぱらっていてもぴったり!
2部

旅の歌うたい
殺そうと思うだけで良かったのに
時代が変わっても
センシミーナ(槙野リクエスト)
アンコールワットへの道

勇造さんと南風楽天マスターの槙野さんの出会いは…
京都アザーサイドで唄っている時に
お客さんとして来ていた槙野さんから
高槻で唄って欲しいという申し出があったそう。
その相談をアザーサイドのステージの上でしたそうな。
今では年に2〜3回、南風楽天でライヴがある。
   



後ろにあるピアノの横のライトのセットが始まった。
ん?もしかして…と思ったらやはり!
勇造さんがピアノを、その両側に仲さんと敬明さんが立たれた。



最初、敬明さんの入りどころが合わず
「あれ?」っという勇造さんに
「まだ2回してへんやん…」と敬明さん。わは。
なんか、この気楽なやりとりが
リラックスできてええわ…(^-^)



私の場所から手を伸ばせば届く距離。手元がしっかり見える。
そして始まった『旅の歌うたい』
最初に勇造さんのピアノが…
一瞬「トム・ウェイツや!」ってカンチが囁いた。
それを耳にした敬明さんが笑わはった。
そうやね、なんか和音が煙ったような音してる。
あまり鍵盤から手を離さずに押えられるからか…
誰のものでもない、勇造さんのピアノの音。
ものすごくやさしく耳に届いてきて
知らず知らずに涙が滲んできた。
なんだか、ありがとうって気持ちになった。





舞台を前に戻して
勇造さんのソロで『殺そうと思うだけで良かったのに』
学校で唄わはったことがあるそうな…激しいギターに思いをぶつけるよう。





『時代が代わっても』
勇造さんのハープは
敬明さんとは微妙に違う。音が太いように思う。



敬明さん仲さんを迎えて、槙野さんのリクエストの『センシミーナ』が始まる。
「もうあと20年ほどしか生きひん予定ですねん」と勝手に言う槙野さんに
♪100まで生きよう♪って。
「みんなで100まで生きて、世の中に迷惑をかけよう!」って。
わは…ええわ、それ。(^Q^)/^
そういう思いがあってか、最後がマイナーからメジャーになって終わった。
どこか救われる思い。





続いて『アンコールワットへの道』

♪今見た事ははっきり覚えておこう
♪アンコールへの道はまだ遠い

どの唄もええけど
勇造さんの旅の唄はほんまに旅情に溢れていて
見た事もない土地が目の前にパアッと広がっていくよう。
みんなきっと行ってみたいって、そう思ったはず。

仲さんがエキゾチックなギターを添わせていかれる。

♪盗まなくても済むように
♪戦わなくても済むように
♪願いが力になるように
♪アンコールへの道はまだ遠い


まだまだ終わりきらないライヴがここで終わった。





そして観客はやっぱり終わらない。(笑)
アンコールの手拍子が続く。
勇造さん、外にでて袖に隠れようにも扉が開かない。(笑)
観念して戸口で向きを変えて、『走れアルマジロ』が始まる。


観客の間をぬって敬明さんも仲さんも加わって
3人で流し状態。(爆)
客も含めて全員で唄うアルマジロ…
槙野さんが思わず駈けよって、勇造さんの首にお捻りを!(笑)

アンコール

走れアルマジロ
満月
大文字
Happy Barthday to You


ここで槙野さんのご挨拶。
「3年持たせてもらってありがとうございます。
あと10年、13回忌したら閉店します」という声にうそ〜って客の笑い。
「そんなこと言う人ほど長生きするぞ」とヤジが飛ぶ。
「あ、その時は閉店記念パーティをしよ!今から予約とっとこかな?」って槙野さんも負けていない。(笑)

『満月』がタイ語でゆっくり始まる。
月夜さんとはっしゃんも加わって、全員が舞台に。
月夜さんのスキャットのコーラスが
更に気分を盛り上げて、白く光る満月が現れるようだった

そして…最後は続けさまに『大文字』
あ、これもしかして私達にって…ファンは勝手なもんやね。(笑)
自分に唄ってくれはったと思ってジ〜ンと来た。多分に自家発電かもしれないけど…(笑)

最後はお誕生日だった、ケメコはうすの澤田さんに
『Happy Birthday to You』





今どういう訳か、私の周りにはアマチュアの歌い手が一杯いる。
そして、それぞれの糸をずっと辿っていけば、勇造さんに繋がっていく不思議。
そう、別に勇造さんのライヴで知り合った訳ではないのに
底の方に勇造さんが流れていた。

この前、大胆不敵にも、そのメンバー3人が中心になって『おやじライヴツアー』なるものをやった。
大阪、埼玉、横浜と続けざまに3連荘のライヴ。
遊びのようで、やっている人間は結構真剣だった。
だけどたった3日間で、みんなへとへとになった。
知らない会場で知らないお客さんを前にどうやって唄を届けるか…
その興奮と刺激と悩みでへとへとになり、難しさが身にしみた。
ついて行った私でさえ、そうだった。

思えばそれを勇造さんは1年365日の内の100日やっておられる。
遠方の場合は、自分で楽器は元より、CDから資料からすべてを抱えての旅支度。
そこに待っていてくれる人がいるから…だろうけれど
そこで出会ったら、また盛りあがってエネルギーを使って次のところへ…
3日に一度と単純に計算しても
1日ライヴして、次の日休養して、翌日はライヴに備えて…その繰り返しだ。

『旅の歌うたい』…この言葉には気楽な響きがあるけれど
本当にこれを支えているものは、強靭な精神と体だろうなって思う。
生半可ではできない。

人の幸せを願う唄を唄われている。
願うためには自分に余力がないと無理だよね。
人を楽しませるには、自分のことで精一杯では無理だよね。
勇造さんは何より唄が唄いたいから、唄うことが好きだから
楽しみながらも、ちゃんと自分を整えてはるんやって思った。

別に特別なことをされているわけでもないのに、客は勇造さんに吸い込まれていく。
みんな勇造さんに集中している。
ああ、この人は本物の歌うたいやなって…そう感じたライヴだった。
あのピアノで弾かれた『旅の歌うたい』…そこにちゃんとした実像があるから
きっと涙がでたんだろうと思う。
私の中の正直なものが動いた瞬間だった。


勇造さん、いつもステキなライヴをおおきに!!


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